中国による領土割譲!?
スリランカに迫る魔の手
これが高じていくと、中国への事実上の領土割譲と呼べる事態にまで発展することもあります。例えばスリランカでは、2017年7月、同国第3の港であるハンバントタ港が、中国の国営企業に99年間リースされることになりました。
スリランカはインドの南東にあるセイロン島を領土とする国で、有名なリプトン紅茶の本拠地ですね。ハンバントタ港はセイロン島の南の端にあります。
この国は、1983年から2009年まで続いた内戦の間に中国人が大量に流入し、中国からの武器や資金の供与を受けた政府軍が内戦に勝利しました。
その翌年、2010年に、中国から1440億円の融資を受けて作られたのがこのハンバントタ港です。
地元の人たちは最初はこれを歓迎しました。きれいな港もできるし、その建設で地元に雇用が発生し、建設資材の売り上げによって地元が潤うだろうと思ったのです。
スリランカが陥ったわな
しかしこの期待は見事に裏切られました。中国は建築資材をすべて中国本土の国営企業に発注し、資材は中国本土から運び込まれました。
それと同時に大量の中国人労働者が中国本土からスリランカに上陸し、現地の人々は一人たりとも雇用されることはありませんでした。港の建設費はすべて、中国人の懐に入ったわけです。
さらには中国は港の建設費に6.3%の金利をかけていました。内戦が終わったばかりで国内が荒廃しているスリランカでは、結局政府がこの債務の返済を行うことができず、出来上がった港は中国にリースされ、中国人だけが使えるようになったわけです。
結局、建設費用はすべて中国に持っていかれ、できた港も取り上げられ、スリランカにとっては何の利益もなかったわけです。
完全に詐欺ですね。というか、やくざの手法に近いと思います。
注意すべきはこの99年リースという手法です。これはイギリスが香港に対して行ったのと同じ手法ですね。
イギリス領香港は香港島と、対岸の九龍地域からなっていました。香港島そのものは、1841年のアヘン戦争とその講和条約である南京条約によってイギリスに領土として割譲されました。
しかし対岸の九龍地域は1898年に、イギリスが清から99年間租借(リースのことです)していたのです。その租借期限が切れる1997年にイギリスは中国に香港地域全体を返還したというわけです。
要するに99年リースというのは、事実上「領土割譲」と同じ意味です。あと99年間は、中国はハンバントタ港を自由に使えるのですから。
中国はスリランカをだまして債務の罠にはめ、港を割譲させ、まんまとインド洋の拠点をせしめたというわけです。
インド洋の拠点を獲得
このハンバントタ港は、初めから海底を深く掘られ、軍港として使えるように、設計されています。
今のところ中国は軍港化を否定していますが、近い将来軍港化され、中国軍が駐留するインド洋の拠点と化すのは確実であると思われます。