日本人が気づいていない天皇陛下の威光
このブログで何度か述べたように、現在中国は日本国内で主にマスコミを通じて様々な工作活動を行っています。
その工作活動の根本にあるのは、コロナによって延期になっている習近平の国賓来日を何としても実現させたいという思いです。
多くの日本人の方々は「なんでそんなに日本に来たいの?」「そこまでして来日しなくてもよいのでは?」と思っている方が多いようです。
別に習近平は、日本を観光したいわけでもなく、安倍首相に会って今後の政策について協議したいわけでもありません。
習近平は、天皇陛下に会いたいのです。
「なんで天皇陛下なの?」とおっしゃる方は、国際社会における天皇陛下の影響力をご存じないのだと思います。
特に過去の日中関係において、天皇陛下の果たした役割は絶大です。ここでは中国の指導者が、対外的、対内的にどのようにして天皇陛下を「利用」してきたのかについて述べていきたいと思います。
90年代、江沢民の来日
天安門事件による中国バッシング
1989年6月4日、北京の故宮前に広がる天安門広場は、胡耀邦の死をきっかけに始まった民主化運動のデモを行う民衆であふれかえっていました。
この日未明、当時の中国の最高指導者、鄧小平の意を受けて、李鵬首相は、中国人民解放軍に、デモ隊の鎮圧命令を出しました。
人民解放軍の戦車部隊がデモ隊に襲い掛かり、人民に機銃掃射を浴びせ、戦車によって多くの人民がひき殺されました。
およそ10000人の犠牲者を出し、デモは鎮圧されました。天安門事件です。
この人民解放軍による北京市民虐殺の様子は、BBCやCNNによって、現地から生中継されました。この様子は、無座別発砲による自国民の虐殺とみなされ、中国は世界中から非難を浴びることになりました。
これを受けて鄧小平は失脚。跡を継いで最高指導者の地位に就いた江沢民は、世界中からバッシングを受け、経済制裁を食らいます。
西側諸国の政府は次々と、天安門事件で中国共産党が行った武力弾圧を非難する声明を発表しました。
アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ(当時)を含む各国は、武器を持たぬ一般市民を無差別に虐殺した蛮行に対して抗議し、G7による対中首脳会議の停止、中国への武器輸出の禁止、世界銀行の中国への融資の停止などの外交的・経済的制裁を実施しました。
日本は、対中国のODA凍結を発表し、翌1990年から行われる予定だった第3次円借款を停止し、日中友好環境保全センターの建設などを保留とする見直しを行いました。
外国企業は、中国国内から一斉に社員を引き上げさせました。
翌7月に行われたアルシュサミットでは、各国が中国を非難しました。しかしこのとき日本の宇野宗佑首相(当時)だけが、「中国を孤立させはしない」と主張して、他の先進諸国と距離を取り、結局共同宣言に中国非難の文言が入ることはありませんでした。
これを見た江沢民は、日本をたよりに、国際社会から天安門事件のイメージを払しょくさせる作戦を実行します。
91年には海部俊樹首相(当時)が訪中し、円借款が再開されます。
そして92年4月、江沢民は盟友田中角栄元首相のお見舞いを兼ねて、来日し、天皇陛下と会談し、天皇皇后両陛下を中国に招待します。
同年10月には、天皇・皇后両陛下の中国訪問が実現します。
誰が偉いの?
ちなみにこのとき江沢民は国家主席ではありませんが、中国共産党中央委員会総書記の地位にあり、中華人民共和国の最高指導者として実権を掌握していました。
中国には「主席」と名の付く役職が3つあり(国家主席、共産党中央委員会総書記(以前は主席)、共産党中央軍事委員会主席)、歴代の最高指導者はこの3つのうち1つ以上を保有してはいますが、どの「主席」が実権を持っているかは時代によってまちまちです。
この辺の事情は複雑なので、興味のある方は拙著
に詳しく解説しておりますので、どうかご一読ください。
中国バッシングを消滅させた天皇陛下の威光
話を元に戻しましょう。
この92年に行われた、江沢民と天皇陛下の一連の会談の効果はすさまじいものでした。
これを機会に世界各国の中国バッシングは一斉に鳴りを潜め、中国への経済制裁は解除され、中国への対外援助や借款が再開されました。
もちろん世界各国の国民が私的に天安門事件を非難することはありましたが、これ以降、各国首脳が公式に、天安門事件を理由に中国を非難することはなくなりました。
これが天皇陛下の「威光」なのです。
天皇陛下の影響力の根源は?
なんで日本の天皇陛下がこれほどまでの影響力を持っているのでしょうか?
諸外国から見ると天皇陛下はとても神秘的な存在に見えます。
今から2700年前、古代ローマの建国とほぼ同じ時期に始まった王朝が、延々と継承を繰り返し、現在まで続いているのです。
さらに天皇陛下は政治に一切口を挟まず、現世から完全に隔絶した立場で国家を統治しています。
日本の天皇陛下は諸外国から見ると、人知を超越した存在に見えるわけです。
その人知を超えた存在が、何事もないかのようににこにこして中国の最高指導者と会談を行った。これは要するに、人知を超えた何かが中国を認めたように見えるわけです。
江沢民と天皇陛下の会談を見て、諸外国は、ああ、日本は中国の行為を認めたんだな、日本の天皇は中国の行為を認めたんだな、人知を超えた何かが中国の行為を認めたんだな、と感じられるわけです。
その結果、思わず中国へのバッシングを止めてしまう、こういう力が天皇陛下にはあるわけです。
その後の中国は・・・
その後、江沢民は1998年に、今度は「国家主席」としてもう一度来日しています。この来日は、有史以来初めての中国国家元首の来日、として話題になりました。
対外的には国家主席が国家元首のように見えますが、中国国内では国家主席よりも中国共産党中央委員会総書記のほうが格上とされます。
このとき江沢民は3つの主席を兼任していました。2002年11月、江沢民はそのうち2つを胡錦涛に明け渡し、胡錦涛が最高指導者として実権を掌握するようになります。
胡錦涛はとても温厚で穏やかな統治をおこないました。日中間の歴史問題を棚上げし、日本に謝罪と賠償を求めることをやめ、反日教育を取り締まり、国力のすべてを経済発展に注力しました。
この胡錦涛の時代に中国は、GDPで日本を抜いて世界第2位に躍り出ます。
日本から見ると、とても信頼できる指導者だったのですが・・・。
しかし、これまでのような、国家への不満を日本のせいにする政策をとらなかったため、国民の不満が直接共産党政府に向けられることになり、各地で頻発する暴動に悩まされることになります。
2000年代、胡錦涛の来日
チベット暴動勃発
2008年に入ると、8月に行われる北京オリンピックに向けて、中国国内は活況を呈していました。スタジアムの建設も終わり、宿泊する選手や観客の宿舎の建設も進み、中国初のオリンピックを国家を挙げて成功させようとしていました。
しかしこのタイミングで、胡錦涛時代中国における最大の暴動が発生してしまいます。3月10日、チベット自治区の中心都市、ラサ市で起きたチベット暴動です。
この暴動は、北京オリンピックを控え強攻策をとれない中国政府を尻目に、瞬く間にチベット自治区全域に広がり、4月に入っても収束する気配が見えません。
やむなく胡錦涛は、鎮圧命令を出し、結局暴動は鎮圧されるのですが・・・。
このときは天安門事件の時と違い、実弾を使わず、ゴム弾と催涙弾と警棒での鎮圧だったのですが、やはり各地で合わせて203人の死者が出てしまい、胡錦涛は国際的批判にさらされることとなります。
アメリカを中心とする西欧諸国は、中国政府の人権侵害を批判し、4か月後に控えた北京オリンピックのボイコットをほのめかす国も現れ、胡錦涛政権は窮地に立たされました。
ここで胡錦涛が打った起死回生の一手は・・・もうおわかりですね。
天皇陛下との会談です。
胡錦涛の国賓来日
2008年5月6日、胡錦涛は国家主席として2度目の国賓来日を行い、天皇陛下と会談しました。会談そのものはチベット暴動や、その直前に起きた毒入り餃子事件の話が出たそうですが、終始穏やかに進行しました。
しかしこの会談の効果はやはり絶大でした。
それまで中国の人権侵害を批判していた国々は、ぴたりと批判をやめ、北京オリンピックボイコットを示唆していた国は一斉にオリンピック参加を表明しました。結局8月の北京オリンピックは、一国もボイコットすることなく、何事もなく開催され、大成功に終わりました。
天皇陛下の威光が北京オリンピックを救ったのです。
もっともこの来日は日本側も心得ていて、反日運動を取り締まり、日本に謝罪と賠償を要求しない胡錦涛の窮地を救おうということで、外務省と宮内庁が共同で素早く来日の手はずを整えたということです。
習近平国賓来日の真の狙いは?
それでは習近平はなぜ、このタイミングで国賓来日を実現させたいのでしょうか?
ここまで読んでいただいた読者の皆さんはもうお分かりですね。
現在世界中で新型コロナウィルスが蔓延し、そのウィルス拡散の責任を問われ、中国は世界各国から謝罪と賠償を請求されています。
この世界各国からの非難を、天皇陛下を利用することによって、回避しようと考えているのです。
もし国賓来日が実現したら?
もしもこのタイミングで、年内に習近平の国賓来日が実現し、天皇陛下との会談が行われてしまったらどうなるでしょうか。
これまでの例から考えると、世界各国は、これを見て、日本が中国の行為を認めたと判断するでしょう。
これによって、中国を非難する声が大幅に弱まり、ことによっては中国はコロナの被害者であるという意見が大勢を占めてしまうかもしれません。
もっとも今回はコロナウィルスが世界中に蔓延し、その人的、物的被害も莫大なので、さすがに中国が完全に正当化されてしまうことはないでしょう。
それでも、中国を非難しない国がある程度出るのは確実でしょう。
現在では中国対全世界という構図になっていますが、習近平の来日後には、一部の国が中国側につき、アメリカ陣営対中国陣営という構図に替わってしまうことも考えられます。
そして国賓来日を実現させた日本が、中国陣営とみなされてしまう危険もあります。
習近平の国賓来日は絶対に実現させてはならない
このような事態は絶対に実現させてはなりません。
自らが開発し、自らがまき散らした新型コロナウィルスに対する非難は、正しく中国に向けられるべきです。
中国は自らの行なった行為を反省し、世界中に謝罪して、再発防止に努めなければなりません。それが世界に対する中国の責任です。
その責任を放棄し、自らに向けられた非難を回避するため、天皇陛下を利用しようとしている習近平の計画を実現させてはなりません。
日本政府は習近平の意図を正確に把握したうえで、のらりくらりと理由をつけて習近平の来日を阻止していただきたいと思います。