笹原シュン☆これ今、旬!!

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時事速報10 フェイスブックが存亡の危機!? アメリカ黒人暴動の予想外の影響力。

フェイスブックが広告ボイコットを受ける

 GAFA(ガーファ:google apple facebook amazon)の一角としてアメリカIT業界に君臨し、栄華を誇ったフェイスブックが存亡の危機に立たされています。

 

 6月下旬、コカ・コーラやユニリーバ、スターバックス、リーバイ・シュトラウス、ペプシコなどの大手企業が相次いでフェースブックからの広告引き上げを表明しました。

 

 フェイスブックは、収入の96%を企業からの広告費で賄っていますので、これによって大きな打撃を受けることになりました。

 

 これを受けてフェイスブックの株価は、6月26日、一気に8.3%下落し、時価総額560億ドルが吹き飛びました。現在1ドル108円ですので、一日で6兆480億円の資産が消滅したことになります。

 

 ちなみにこれと同時にフェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏の個人資産も、一日で70億ドル(7560億円)消滅しました。

 

www.asahi.com

www.bloomberg.co.jp

 

 この異常な事態を引き起こした原因は、なんと6月上旬から続いているアメリカの黒人暴動だったのです。

 

黒人を非難する言論が封殺される

 すでにこのブログでも何度か述べたように、2020年5月25日にミネソタ州ミネアポリスで発生した、黒人のジョージ・フロイド氏が白人警官によって殺害された事件をきっかけに、全米で黒人による暴動が広がっています。

 

 一時はワシントン州シアトルの一部を黒人が占拠し、自治区を宣言するまで発展した暴動ですが、一か月以上たっても収束する気配はありません。

 

 しかもアメリカ国内では、この暴動を鎮圧しろ、という意見を表明すると、一斉に攻撃を受ける空気が蔓延しています。

 

 「黒人の差別を許すな、暴動を非難するものは敵だ」と主張する人々と、「暴動は黒人によるテロだ、早急に鎮圧しろ」と主張する人々との間でせめぎあいが行われているわけです。

 

 そして後者の代表が、トランプ大統領です。

 

トランプ大統領の発言に、ツイッター社が待ったをかける

 トランプ大統領は、この暴動が発生した初期のころから、一貫して、この暴動をテロとみなし、軍によって針圧するべきだと主張しています。

 

 トランプ大統領のその主張は、SNSを通じて表明され、拡散されています。ツイッターやフェイスブックのことですね。

 

 ツイッター社は、5月26日の段階で、大統領選挙における郵送投票を非難するトランプ大統領のツィートに、事実確認タグをつけていました。

 

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郵送投票で実質的に詐欺が起きないとは全く言えない。郵便受けから盗まれ、投票用紙は偽造され、違法に印刷され、詐欺の署名が行われる。カルフォルニア州の知事は投票用紙を何百人もの人々へ送っている。

というトランプ大統領のツィートの後に、青い警告マークがついていますね。

 

 これをクリックすると、「トランプは、郵送投票が選挙詐欺につながると根拠のない主張をしている」という表示とともに、CNNなどへのリンクが表示され、郵送投票がいかに正当に行われているかという記事が表示されるようになっています。

 

 これに対してトランプ大統領が激怒。5月28日には、SNSの、ユーザーに対する免責を解除する大統領令に署名します。

 

 それまではSNSで発言された意見が他者に損害を与えたとしても、SNS自体は損害を賠償する責任はなかったわけですが、この免責規定をトランプ大統領が削除したわけです。

 

「俺の意見に文句をつけるなら、お前らに対する優遇措置を解除するぞ」ということです。

 

 しかしツイッター社は、これをものともせず、5月30日、黒人暴動に関するトランプ大統領のツィートに「暴力を賛美している」というタグをつけます。

問題になったトランプ大統領のツィートは以下のようなものです。

 

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トランプ大統領のツィート

 彼ら凶悪犯はジョージ・フロイドの名誉を汚している。こんなことはさせない。ティム・ワルツ州知事と今話しをした所で、いつでも軍の支援をする用意があると伝えた。どんな困難が起きたとしても、我々はそれをコントロール下に置くだろう、略奪が始まれば発砲が始まる。ありがとう!

 

 という内容のトランプ大統領のツィートに対して、ツイッター社は、「暴力の賛美についてのTwitterルールに反している」というタグをつけているわけです。

 

 トランプ大統領はさらに怒り狂いましたが、この直後に、ツイッター社の株価は、1%上昇しています。

 

フェイスブックの表現の自由発言

 

 トランプ大統領は、ツイッターとフェイスブックをリンクしていますので、まったく同じ発言がフェイスブックからも発信されました。

 

 ツイッター社がトランプ大統領の発言を「暴力の賛美」としたのに対し、フェイスブック社はこれに対して何の対応も取りませんでした。

 

 ネット上ではフェイスブックの対応を非難する意見が飛び交い、5月31日、フェイスブックのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏が、記者会見を行いました。

 

 ザッカーバーグ氏は、トランプ大統領の発言はフェイスブックのポリシーには違反していないとし、以下のように述べました。

 

「多くの人が大統領の投稿をそのままにしていることに憤慨しているのは知っています。しかし、我々の立場は、明確な政策に明示された特定の害や危険の差し迫った危険を引き起こさない限り、できるだけ多くの表現を可能にすべきだということです。我々はミネソタでの抗議を論じた投稿を非常に注意深く読みました。州兵への言及は、その行動についての警告として読むことに意味があり、政府が武力の配備を計画しているかどうかを人々が知る必要があると考えています」

 

  つまり、表現の自由を守り、政府の動向を人々が知るためには、トランプ氏の発言に規制を加えるべきではない、という意見を表明したわけです。

 

フェイスブック広告ボイコット発生

 このザッカーバーグ氏の発言に対し、全米黒人地位向上協会(NAACP)やColor of Change(アフリカ系アメリカ人の会)、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)などの市民団体が、相次いで、広告主に対し、フェイスブックへの広告費の支払い停止求めました。

 

 彼らは「暴力、人種差別、および嘘を助長するプラットフォームはサポートしない」をスローガンに、アメリカ企業に対してフェイスブックへの広告出稿停止を働き掛けていきました。

 

 アメリカ企業はしばらく事の成り行きを見守っていましたが、6月19日、ついに彼らの呼びかけに答えて、フェイスブックへの広告出稿を停止する企業が出現しました。

 

 アメリカの衣料品会社ノースフェイスです。ノースフェイスは、

我々は、有害で人種差別的なレトリックや間違った情報が、世界を不平等で安全ではないものにしていることを知っている。

と述べ、フェイスブックとその子会社のインスタグラムでの広告掲載を停止しました。

 

 さらに6月21日には、アウトドアショップのパタゴニアが

フェイスブックはあまりにも長い間、そのプラットフォーム上での憎悪に満ちた嘘と危険な宣伝の拡散を阻止するための十分な措置を講じてこなかった。

として、フェイスブックをボイコットすると宣言し、広告の出稿を停止しました。

 

 その後、REI(アウトドア用品)、トークプレース(メンタルヘルスアプリ)、ブレイズ(ソフトウェア)、フォンズなどの企業が相次いでフェイスブックボイコットを表明します。

 

 そして6月26日、イギリス・オランダの日用品会社ユニリーバや、コカ・コーラ、スターバックスなどの大企業がフェイスブックボイコットに参加した時点で、フェイスブックの株価が暴落し、フェイスブックは一気に存亡の危機を迎えてしまったというわけです。

 

 またこのボイコット運動の過程で、フェイスブックからは創業以来仕えてきた優秀な社員が相次いで去っていきました。

 

 26日、あわてたザッカーバーグ氏は、前言を撤回し、フェイスブックにおいても暴力的発言は削除するとの意向を表明しました。

 

 しかし時すでに遅し。フェイスブックのボイコットは収束する気配がありません。これからしばらくフェイスブックにとっては厳しい状況が続いていくでしょう。

 

SNSの今後の運命は

 

 以上のように、SNSについては、黒人を非難する発言を規制しても、放置してもリスクが生じる状態となっています。

 

 発言を規制すると大統領から攻撃され、放置するとボイコットされてしまうわけです。

 

 しばらくの間はこの状況を打開する手段はなさそうです。

 

 SNSの運営も大変ですね・・・。