さまざまなブロックのもととなる考え方
これまで、地上の人間に課せられた「死のブロック」「お金のブロック」の実態と、その解除法について述べてきました。
これを実行するだけでだいたい8割がたの悩みがなくなると思います。
残りの2割は、宗教・国家・権威・学問・教育のブロックに基づいています。これらのブロックは実は原理が同じで、人間の思考システムの根本にはたらきかける方法でブロックをかけています。
それではその、人間の思考システムの根本とは、どのようなものなのでしょうか?
推論のもととなる公理
人間の思考はAならばB、BならばC・・・という感じで続いていきます。思考力が高い人というのは、この推論が素早く、正確にできる人のことです。
それではこの推論の過程を、逆にたどってみたらどうなるでしょう。ZならばY、YならばX・・・BならばAとたどっていくと、今度は無限にさかのぼることはできません。
必ず最後に、推論の過程に基づかず、無条件に認めている考え方に行き当たります。これが公理と呼ばれるものです。
一番わかりやすいのは、平面幾何学の公理でしょうか。
中学校2年生ぐらいで、図形の証明問題ってやりませんでしたか?数学が嫌いな方の半分くらいは、まずここでつまずいたのではないでしょうか?
角○○と角△△が等しいことを証明せよ、なんて言われて、一生懸命証明書かされましたね。
あれは、古代ギリシャのエウクレイデス(ユークリッド)が考案した、数学の体系で、ユークリッド幾何学と呼ばれています。
証明の過程は複雑で、日本中の中学生を絶望の淵に叩き込んでいるのは、みなさんご存じのとおりです。
しかしあの証明の過程をどんどんさかのぼっていくと、じつはたった5つの「公理」と呼ばれるものに行き当たるんですね。その5つとは、以下の通りです。
1: 点と点を結ぶ最短距離は直線である
2: 線分は両側に延長して直線にできる
3: 1点を中心にして任意の半径の円を描く事ができる
4: 全ての直角は等しい角度である
5:一点を通り一本の直線に平行な直線は1本だけである
この5つの公理はどれも証明は不可能です。はじめに「これは正しいよね?」ということにして、無条件に正しいことを受け入れているわけです。
ちなみに1~4に関しては、ほとんどの方が直観的に正しいと感じると思います。点と点を結ぶ最短距離?直線に決まってるじゃん、というわけです。
5に関しては、2000年以上にわたって多くの数学者が証明を試みましたが、証明に成功する人物はついに出ませんでした。
しかし、この公理を否定し、「一点を通り、一本の直線に平行な直線は何本もある」という公理を採用すると、それはそれで全く別の幾何学の体系が出来上がることが知られています(非ユークリッド幾何学)。
ようするに、どんな複雑な理論体系であっても、論理的推論をどんどんさかのぼっていくと、もはや証明できない「公理」に行き当たるのであり、この公理については、無条件で受け入れ、それをもとにすべての推論は行われているというわけです。
日常生活に潜む公理
論理的思考の出発点に必ず公理があるというのは、数学に限ったことではありません。
意識的にせよ、無意識的にせよ、人間の思考には必ず、出発点となる公理が隠されています。
これはやってみるとすぐにわかります。推論の過程を逆にたどってみてください。
ZならばY、YならばX・・・BならばAとたどっていくと、わかります。
なんでZなの?Yだからだよ・・・なんでBなの?Aだからだよ、となった時点で、なんでAなの?と聞かれると、「AだからAなんだよ!」みたいになります。これはご自身でやってみるとすぐわかります。
なんであなたは上司のAさんが嫌いなの?ー勝手だからさ。
なんでAさんは勝手なの?ーいつの間にか○○を決めてた。
なんでいつの間にか○○を決めたらダメなの?ー俺に話を通してないだろ。
なんであなたに話を通さないとだめなの?ー関係者みんなの意志を反映させないとダメだろ。
なんで関係者みんなの意志を反映させないとだめなの?ーものごとはみんなで話し合って決めないといけないもんだろ。
なんでみんなで話し合って決めないとだめなの?ーそういうものなんだよ!
なんて感じで、どんどんさかのぼっていくと、最後にあなたがキレるポイントがやってきます。この時、相手が聞いてきたことが、あなたにとっての公理です。
上記の例では、この方は「ものごとはみんなで話し合って決めなければならない」ということを、推論の出発点にしているわけです。これがこの方にとっての公理です。
これは日本文化に特有の「話し合い至上主義」と呼ばれる考え方で、多くの日本人が同じ考え方を持っているので、これをお読みの方は、そんなのあたりまえじゃん、と思う方が多いと思います。
でも考えてみてください。アメリカ人が同じ考え方をするでしょうか?中国人が同じ考え方をするでしょうか?
アメリカ人なら、優れた指導者がリーダーシップをとって一人で決めるのがベスト、無能な人間を何人集めて話し合っても何も決まらない、と考えるかもしれません。
中国人なら、みんながワイワイ話して決められないうちに、さっさと一人だけ利益をかっさらうのが賢いやり方だ、と考えるかもしれません。
「話し合い至上主義」は人類普遍の考え方でもなんでもなく、多くの日本人特有の考え方にすぎないというわけです。
こんな感じで、思考にはその出発点となる、無条件に受け入れている公理があり、その公理を共有する人たちが、集団で生活し、一つの文化を形成しているのです。
この、ある一つの文化を共有する人々の集団が、本来の意味の社会であり、国家であるというわけです。
公理は絶対譲れない
人間は、無意識のうちに何らかの公理を受け入れ、その公理をもとに、すべての思考を行っています。そしてどんなに温厚で、寛容な人物であっても、どんなに頭がよくて、思考力の優れた人物であっても、この公理の部分を攻撃されると、激烈な拒絶反応を示します。
それはそうです。公理はすべての思考の基礎となる部分ですので、それを否定してしまったら、その人の思考の体系がすべて崩れ去ってしまいます。これはその人にとって、大きな痛みを伴います。
たとえば、Aさんは「日本は2次大戦で多くのアジア諸国を侵略し、多大な迷惑をかけた。日本はこれを反省し、謝罪しなければならない」という考え方を公理としているとします。
Aさんにたいして、「中国が領海を侵犯している。なんとかしないと」なんていうと、すかさず、「日本は何をされても反撃してはならない」なんて答えが返ってきます。
「侵略されてもされたままにするの?」なんて聞くと、「どんなことをされても戦ってはダメだ」なんていいますが、これは「日本は2次大戦で中国を侵略したんだから、侵略されても当然だ」ということです。Aさんにとってはこれは、公理から導出した当然の結論なのです。
そして、「日本は本当に中国を侵略したの?」と聞くと、烈火のごとく怒りだします。「日本はアジアを侵略したんだ!反省と謝罪をしなければならないんだ!」なんて叫びだして、あとは何を言っても駄目です。
それはAさんにとって、「日本がアジアを侵略した」ということが公理であり、思考の出発点となっているからであり、これを否定されるとAさんの全思考体系が崩壊してしまうからです。
この後、どんなに証拠を挙げてAさんを説得しようとしても、Aさんは聞く耳を持ちません。Aさんに話を聞かせるためには、Aさんの公理そのものを入れ替えるしか方法はなく、それはAさんに「別の人間になれ」というに等しいからなのです。
洗脳の手法
しかしAさんは生まれながらに、「日本がアジアを侵略した」を公理として生活していたのでしょうか?
おそらく幼少時代は、ごく一般的な日本人として生活していたと思います。
その後、学校の教育や、マスコミの報道によって、徐々に「日本がアジアを侵略した」という情報をインプットされ、考え方が変わっていったと思われます。
この「情報を繰り返しインプットすることによって、公理を書き換える」という行為が、洗脳と呼ばれるものです。
洗脳によって公理を書き換えられた人物は、そうでない人たちと全く違く思考の出発点を持っていますので、どんなに優れた思考力を持っていたとしても、結論は全く異なったものとなってしまいます。
たいていの場合、周りの人々と全く話がかみ合わず、同じ公理を持つ人々同士のコミュニティで会話をするようになります。
そして、多くの場合、自分の公理と真っ向から反する公理を持っている人々との間で、争いが巻き起こるようになるのです。
DSの手口
はじめにあげた、DSによる、宗教・国家・権威・学問・教育のブロックというのはすべてこの原理を用いたものです。
まずは宗教の教義や学問の内容を書き換え、それを洗脳によって、多くの人々に公理として植え付け、真っ向から対立する公理の人々どうしを争いに導くという手法です。
たとえば、○○教と△△教という2つの一神教があるとします。
ここで、それぞれの教義を微妙に書き換え、「この世界の神は○○ただ一人である。○○を信じない異教徒は悪魔だ。悪魔はあの世へと旅立たせるのが善である」「神は△△ただ一人である。△△を信じない異教徒は力によって教え導かれるべきである」などとしてしまいます。
その後、○○教と△△教をそれぞれ広め、隣接させれば、それぞれの信徒たちが互いに争い始め、自動的に大規模な戦争に発展していきます。
また、自然科学を微妙に書き換え、「科学的に証明できないものは存在しない」なんてしてしまうと、「この世界は愛や信頼などの目に見えないものの方が価値がある」と考える人たちとの永遠のバトルが勃発します。
また、ある国に「○○は神の国であり、天〇は地上に降りた神である」という考えを広めた後に、「○○は侵略戦争によって周りの国に多大な迷惑をかけた。○○は未来永劫、謝罪と賠償を続けるべきである」なんて考えを洗脳によって広めてしまえば、2つの勢力の間に延々と続くバトルが発生していくというわけです。
これらのブロックを解除する方法も、全部同じです。
宗教や学問、思想、国家の成り立ちのそれぞれについて、DSによってどこが改ざんされたのかを理解し、自分自身の公理を、本来の改ざんされる前のものにリニューアルしていけばよいだけです。
以下の記事では、実際にそれぞれの宗教、学問、思想、国家システムがDSによってどのように改ざんされ、紛争のネタにされたのかを解説し、みなさんの公理のリニューアルのお手伝いをしていきたいと思います。