コロナ後の習近平国賓来日についての各社の報道
習近平、11月以降に国賓来日と報じた毎日新聞
ことの発端は2020年、6月3日の毎日新聞の以下の記事でした。
習近平氏来日「11月のG20サミット後に」 BS番組で茂木外相
茂木敏充外相は3日夜にBSフジの番組で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となっている中国の習近平国家主席の国賓来日について、11月にサウジアラビアで予定される主要20カ国・地域(G20)首脳会議の後になるとの見通しを示した。
9月には米国で主要7カ国(G7)首脳会議の開催が調整されているが、茂木氏は習氏の来日時期について「外交日程でいうと、どう考えてもG7サミットが先に来るのは間違いない。サウジが議長国で国際世論を形成するG20サミットも日程的に先になるだろう」と指摘した。
中国政府が5月28日に新設を決定した香港の統制を強化する「国家安全法制」を巡り、日本国内や米欧などで反発が高まり、習氏の早期来日が困難になるとの見通しが出ていた。日本政府関係者が来日時期について一定の見通しを示すのは初めて。
茂木氏は「10年に1度となる国賓来日で習氏を迎える以上、成果を上げるよう日本の事前調整や外交手腕が試される」と語った。
とあります。
これを読むと、茂木外相は11月以降に、中国の習近平国家主席を国賓として来日させると語ったように読めますね。
この記事に、ネットは素早く反応し、「なんでこの時期に習近平を呼ぶんだ」とか「もし本当に呼ぶなら安倍内閣は支持しない」などといった意見が飛び交っていました。
しかし、全く同じ6月3日夜のBSフジの番組における茂木外相の発言について、他の新聞では全く違った内容が報道されていました。
習近平、来日見送りと報じた産経新聞
例えば産経新聞の6月3日の記事を読むと、
茂木氏 「日程調整する段階にない」 習氏国賓来日
茂木敏充外相は3日夜のBSフジの番組で、今春の実施が延期となった中国の習近平国家主席の国賓としての来日について、日程調整を進めていないことを明らかにした。香港問題や海洋進出の強化などをめぐる中国への批判が高まる中、「具体的な日程調整をする段階にないのは確かだ」と述べた。
茂木氏は、トランプ大統領が9月への延期を表明した先進7か国(G7)首脳会議(サミット)などで、中国への対応や新型コロナウィルス対策などを議論する必要があるとの認識を示し、「G7サミットのほうが習氏来日より先に来るのは間違いない」と語った。
とあります。
これを読むと、どうやら習氏の国賓来日は見送りかな、という印象を受けます。
これ以外にも、朝日新聞の記事を読むと、茂木外相は、習近平氏は国賓来日するのは決まっていて、その日程が11月以降になるだろうと、述べたように読めます。
朝日新聞:
共同通信から配信を受けている地方紙も、毎日・朝日と同様に、習近平氏は国賓来日するのは決まっていて、その日程が11月以降になるだろうと、述べたように読めます。
共同通信が配信した沖縄タイムスの記事:
新聞による恣意的な編集
いずれにしろ、同じテレビ番組での発言についての報道ですから、毎日・朝日・共同通信連合か、産経か、どちらかが、恣意的な編集をして茂木外相の真意をゆがめているわけです。
どちらが嘘をついているのか、確かめるには元ネタに当たるしかありません。
茂木外相が、「具体的な日程調整をする段階にないのは確かだ」という発言と「外交日程でいうと、どう考えてもG7サミットが先に来るのは間違いない」という発言をしたのは確実です。
それを記事中でどう配置するかで、記事の印象が全く変わってしまうわけです。
では、実際に茂木外相は、どの順番で、どのような文脈で、このような発言をしたのでしょうか?
実際の発言の流れ
私は普段テレビを全く見ないので、元ネタのBSフジプライムニュースは後からネットで探しました。画像付きの番組は有料なので、とりあえず youtube で、音声のみを配信した映像で検討してみましょう。
BSフジプライムニュース音声:
これはフジテレビのキャスターと茂木敏充外相、キャノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏の3社の階段の形の番組です。キャスターが質問して、宮家氏が答え、それに茂木外相が補足説明を加える形で対談は進んでいきます。
一時間半にわたる長い対談ですが、前述の茂木外相の「具体的な日程調整をする段階にないのは確かだ」という発言は40分付近、「外交日程でいうと、どう考えてもG7サミットが先に来るのは間違いない」問う発言は46分付近です。
全体の文脈を理解するには、36分から48分までの部分を通しで聞くとよいと思います。
これ以前のところで、3人は外交青書の話や、中国に尖閣や南シナ海進出、香港の問題、コロナの責任などをどうやって追及するかという話になり、一番いいのは首脳を呼んで直接言うことだという話になります。
そこでキャスターが、習近平の国賓来日について宮家氏に話をふります。キャスターは習近平は当然来ることは決まっているかのような口調で訪ねていますので、この段階ですでに誘導かな、と感じます。
それに対して宮家氏は、習近平の来日をやんわりと否定するんですね。もしも習近平が来るとしたら、さっきの南シナ海や、香港、コロナの問題などを日本側から追及されるのは確実である。習近平の来日は中国としては絶対に失敗できない。これらの問題に国賓来日時に明確な合意ができる見通しがないのならば、中国側はそもそも来ないだろう、という論法です。
もちろん日本側から断るのではなく、「日程が合いませんね~」と言いながらそのまま立ち消えになるだろうという見通しを述べます。そこで茂木外相が、これをうけて「具体的な日程調整をする段階にないのは確かだ」と補足するという流れです。
じゃあ実際に日程はどう調整するのかというキャスターの質問に、またもや宮家氏がやんわりと否定します。その前にG7サミットもあるし、G20首脳会議もあるのでそっちの日程調整が先である。これはめいげんはしていませんが、ようするに「だから習近平の国賓来日の日程調整なんかやってる場合ではないので、結局日程調整は行われないであろう」という意味であろうと取れます。
そこでこの発言を受けて茂木外相が、「外交日程でいうと、どう考えてもG7サミットが先に来るのは間違いない」と補足したというわけです。
習近平国賓来日をやんわりと否定
ようするに、(習近平を来日させたい)キャスターが習近平をいつ呼ぶんだと言ったのに対し、宮家氏がや~んわりと否定し、結局来ないだろうという結論に持っていこうとし、茂木外相がそれに賛同しながら補足し、はっきり結論が出そうなところで、キャスターがいきなり議論を打ち切って、G7の話に持って行ってしまう、というのが全体の文脈です。
キャスターのかなり強引な進行ぶりが鼻につきます。それを2人でやんわり否定したのですが、やんわり過ぎて視聴者にはっきり伝わったかどうかは疑問です。
マスコミによる世論操作の実態
あらためて、新聞各社の報道を見てみましょう。結論として、実際の討論をかなり正確に伝えているのは、産経新聞の記事です。外相の発言の順序もそのままで、文脈もよくくみ取って、本当に言いたかった「習近平来日はない」という結論をやんわり伝えています。
それに対して、毎日・朝日・共同通信の記事の方は、捏造といっていいレベルです。茂木外相のセリフを切り抜き、順序を変えて、貼り付け、間の部分を想像で補い、「習近平、11月以降に来日決定」という、茂木外相の発言とは全く逆の結論を、読者に印象付けようとしています。
しかも、複数の新聞社で同時に、同じような捏造が行われています。
これは裏で共通の勢力が、これらの報道機関に同時に働きかけたとみるべきではないでしょうか。