プラットフォームの謎
現在、インターネット上にはさまざまなSNS が存在し、スマホやPCを用いて、多くの人に利用されています。
これらSNS の原型は90年代後半に開発されていましたが、現在のような形になったのは、2004年~2006年にかけてです。
この時期に、youtube 、ツイッター、フェイスブックなどの、今でも広く使われているSNS が勃興し、シェアを獲得していきました。
これによって、DS は、大きな富を独占しました。その富の源泉となっているのは、プラットフォームと呼ばれるシステムです。
たとえば youtube に動画をアップします。アップロードが終わって、動画が公開され、みなさんが閲覧可能になります。
このとき、あなたがアップロードした動画は、いったいどこに存在しているのでしょうか?
うちのパソコンに保存されてるけどって? ではアップロードが終わった後、あなたのPC上の動画ファイルを削除してみてください。
それでも youtube 上の動画が消滅することはありません。あなたのPC上の動画を修正してみてください。それでも youtube にあなたが上げた動画に変化は見られません。
youtube に上げた動画を修正するには、あなたのPC上の動画を修正した後、以前上げた動画を削除して、修正した動画を再びアップロードしなければなりません。
では、youtube 上で公開され、みんなが見ているあなたの動画は、いったいどこにあるのでしょう。
あなたの動画は、youtube のプラットフォーム上にあります。具体的には、youtube の親会社である、google 社のサーバーの中にあります。
サーバーというのは、莫大なデータを保存できる大型のコンピューターのことです。 この google 社のサーバールームには、このサーバーが何百台・何千台もずらっと並んでいます。
このgoogle 社の中にあるコンピューターの中に、あなたがアップロードした動画は存在し、誰かが閲覧するときには、それらのサーバーの一台にある、あなたの動画にアクセスしているのです。
あなたがあげた動画の著作権はもちろんあなたにあります。にもかかわらず、youtube にアップロードしたあなたの動画は、あなたの手元に存在せず、youtube のプラットフォーム上、すなわちgoogle 社のコンピューターの中にあるのです。
このプラットフォームシステムによって、youtube は、あなたがアップロードした動画に対する生殺与奪権を持つことになります。
例えばあなたがあげた動画が、DSにとってとても都合の悪い動画だとします。そのときは、youtube 社が独断で、あなたのあげた動画を削除します。
これができるのは、あなたのあげた動画があなたのPC上になく、youtube のプラットフォーム上にあるからです。
またあなたがDSに都合の悪い動画を何度も上げると、あなたのアカウントが消去されます。この時、あなたがyoutube に上げた動画も、すべて消去されます。
それらの動画があなたのPC上にすべて残っていたとしても、youtube 上からは消去され、誰も見ることができなくなります。
これももちろん、あなたの動画がyoutube のプラットフォーム上にあるからできることです。
さらには、youtube はDSにとって望ましい動画に広告をつけ、広告収入を得ることができます。
この広告も、もちろんあなたの動画につくわけですが、youtube は、あなたの動画についた広告の広告収入の30%を、問答無用で天引きしていきます。
これがyoutube 社のメイン収入となっています。
誰に収益権を与え、どの動画に広告をつけるのかも、youtube の胸先三寸です。広告掲載回数にしても、youtube の報告をそのままうのみにするしかありません。
こんなことができるのも、アップロードされた動画がすべてyoutube のプラットフォーム上にあり、あなたの手元から離れているがゆえのことです。
youtube 以外にも、ツイッターやフェイスブック、LINE、インスタグラム等に上げられた写真や動画、記載した個人情報などは、すべてそれらのSNS のプラットフォーム上にあり、あなたの手元にはありません。
そのため、フェイスブックのアカウントを削除されてしまうと、それらの写真や動画はすべてネット上から消滅してしまうわけです。
LINE などは、起動時にあなたのスマホに登録されている友達の名前や、電話番号の情報をすべて提供するよう要求されます。
これによって、あなたの友人情報はすべてLINE社に筒抜けになり、速やかに韓国に送られてしまいます。
これらのプラットフォームを通して情報を発信することで、あなたの写真や動画、個人情報やネットでの発言はすべてプラットフォーム上に残され、DSに筒抜けとなります。
また現在では、何らかのプラットフォームを介さない情報発信はほぼ不可能になっていますので、あなたの情報を発信できるかどうかは、DSの胸先三寸ということになってしまっているわけです。
DSによって葬り去られた個人ネットワークシステム
プラットフォームにあげて、ネットで発信なんてあたりまえじゃないか、ぜんぶそうなってるじゃん、という方は、完全にDSに洗脳されてしまっています。
これはあたり前でもなんでもなく、DSによって作られた、悪魔のシステムなのです。
そのことを理解するためには、プラットフォームを介さない情報発信システムを考えてみることをお勧めします。
もしも仮に、あなたのPC 上のファイルの一部をネット上に公開し、それを他の人々が自由にダウンロードできるようななったら、どうなるでしょう。
あなたの公開したファイルを見たい人は誰でも、あなたのPCに直接アクセスし、ファイルをダウンロードできるわけです。
これをすべてのユーザーが行ったとしたらどうなるでしょうか。
あなたは、ネットを検索することによって、見たいファイルを見つけ出し、そのファイルの所有者のPCに無料でアクセスし、ファイルを自由にダウンロードすることができます。
youtube もgoogle drive も必要ありません。あなたのファイルを勝手に削除されることもありません。有料で公開しようと思えば、自由に設定できます。
すべての人が広告料をピンはねされることもなく、見たい動画をその所有者のPCにアクセスして、直接見ることができるわけです。
かくして、DSプラットフォームを介さない、個人と個人が直接つながる、個人ネットワークシステムが完成します。
素晴らしいシステムですね。なんでだれもやらないの?、なんて思った方は多いと思います。
もちろんこのシステムは、過去に考案され、それを実現するソフトも実際に存在していました。
すべての人が、無料で、自由に使えるネットワークを構築するソフトを開発するなんて、日本人に決まっていますね。
この個人ネットワークシステム構築ソフトこそが、日本人天才技術者、金子勇によって、2002年に、2ちゃんねる上で無料公開された、「Winny」なのです。
ファイル交換ソフトの衝撃
金子勇は1970年、栃木県で生まれました。1999年、茨城大学工学部情報工学科の博士課程を修了、工学博士を取得して、2001年、Winny の開発を開始します。
2002年1月に、東京大学助手となり、2002年5月6日、開発が終了したばかりの Winny を、掲示板サイト、2ちゃんねる(当時)のダウンロードサイト板で公開しました。
当時、金子は匿名で掲示板に投稿しており、投稿時の2ちゃんねるのレス番号が47番だったことから「47氏」と呼ばれていました。
Winny はその当時、ファイル交換ソフトと呼ばれていました。このネーミングも、DSによる悪意を感じるネーミングです。
たしかに個人ユーザーがファイルを自分のパソコンで公開し、公開したファイルどうしを交換するソフトは、当時も存在していました。Win MX などがそうです。
金子は、Win MX の後継ソフトを創るという意味で、MとXを一文字ずつずらして、 Win NY → Winny としたのです。
Win MXはまだ、○○さんと持っている動画を交換する、という感じで使われていました。
しかし、Winny の機能はWin MX と比べて大幅に強化されており、不特定多数でアップロードしあったファイルを自由にダウンロードすることができました。
しかも、Winny は、アップロードされたファイルが、誰がアップロードされたのかわからない、という大きな特徴がありました。
ファイルのアップロードのさいに、何重にも暗号化されるため、アップロードしたPCを特定することができず、使用者はただ単に、検索すると、自分の見たいファイルが目の前にずらっと並ぶという、
ちょうどネットの検索をする感覚で、他人がアップロードしたファイルを自由にのぞくことができたのです。
○○さんとファイルを交換する、という感じではなく、ネットを自由に検索して、自分の見たい動画を探す、という感じになったのです。
使用感としては、現在のyoutube 動画を検索する感じで、youtube のプラットフォームを介さず、直接他人がアップロードした動画を見る、というシステムです。
なんと便利なソフトなんだ、ということで、Winny は燎原の火のごとく広まり、従来のWin MX などの使用者も軒並みWinny に乗り換えていきました。
Winny の普及とともに、日本国内を中心に、個人ネットワークシステムが形成されていき、見たい動画やファイルを無料で自由にダウンロードできる環境が広がっていきます。
このWinny の登場は、DSに衝撃をもたらしました。
このころ、アメリカロサンゼルスのシリコンバレーでは、新時代のネットワークビジネスを独占するためのプラットフォームが次々に開発されている最中でした。
しかし、どんなに優れたプラットフォームを作っても、そもそもプラットフォームなしで、自由に無料で見たい動画やファイルにアクセスできてしまう、Winny が普及してしまったら、だれも有料のプラットフォームを使う人はいないでしょう。
かくしてWinny は、シリコンバレー最大の敵と認定され、徹底的に攻撃を受けることとなるのです。
著作権法違反問題
Winny が最初にやり玉にあげられたのは、著作権法違反問題です。
Winny によって公開されたファイルの中に、公開された映画やアニメの動画、いわゆる版権物の動画がいくつか含まれていたのです。
著作権が生きていて、本来映画館で見たり、DVDを買ってみるべき映画が、Winny によって、無料でダウンロードできてしまう。Winny は著作権侵害を助長している、という主張です。
これはまあ、一定の割合で、違法アップロードする人もいるでしょうね、というレベルです。
もちろんDSプラットフォームにおいても、違法アップロードは後を絶たないわけですが、DSはマスコミを抑えていますので、自分に都合の良い、Winny における違法アップロードだけを報道し、Winny は悪だ、というプロパガンダを張れば、Winny だけを攻撃することができてしまうわけです。
2002年当時でも、Win MX における違法アップロードで逮捕される人はかなりの数に上っていました。
しかしWinny は、先に述べた暗号化システムによって、違法ファイルをだれがアップロードしたかわからない構造になっており、DSはなかなか違反者を逮捕することができませんでした。
この事実も、DSによって、Winny 開発者は最初から著作権侵害を目的に、このソフトを創ったに違いない、という言いがかりに使われています。
さらに、当時は、掲示板サイトの匿名投稿者を特定する手段がなく、金子勇氏は「47氏」として、正体不明の人物のままであり、開発者を攻撃できない状況だったのです。
また、金子氏がWinny の投稿場所に2ちゃんねるを選んだのは、それが双方向のコミュニケーションをとれる場だったからです。
最初にWinny のβ版を投稿した後、使用者に使用してみた感想を聞いて、それを参考に、Winny を改良して新たなバージョンを投稿し、また使用感を聞いて・・・という作業が、リアルタイムで行われていました。
金子勇氏によって、Winny は、状況に合わせてリアルタイムで改良されていったのです。
DSがどんな仕掛けをしても、どんなウイルスをまいても、たちどころに金子氏によって、対策が講じられ、ワクチンが作られ、無効化されてしまうのでした。
これに対するDSの結論は、「Winny 開発者を特定し、身柄を拘束しろ」というものでした。
金子勇氏の逮捕
DSはまず、2003年3月7日、個人情報保護法を改正し、掲示板サイトにおける投稿者のIPアドレスの記録・保存を義務付け、捜査機関に対する開示を義務付けます。
これによってやっと、DSは「47氏」が金子勇氏であることを突き止めます。
また、シリコンバレーの総力を挙げて、Winny の投稿者の確定作業を行いますが、なかなか金子氏の仕掛けた暗号を破ることができません。
しかし、Winny の持つ掲示板機能における暗号化が甘いことを突き止め、そこから防壁を潜り抜け、なんとか、アップロードされた動画の投稿者を特定することに成功しました。
こうしてついに2003年11月、Winny に映画を投稿した人物を、著作権法違反で逮捕することに成功します。
同時に、Winny は著作権侵害を助長する悪のソフトだ、みんな使わないようにしよう、とマスコミで大合唱がはじまります。
そして2004年5月10日、Winny 開発者、金子勇氏は、京都府警に、著作権法違反ほう助の疑いで、逮捕・拘禁されることになるのです。
この逮捕の報道を見て初めて、「ああ、47氏は金子勇っていうんだ」「東大の助手なんだ」ということがわかった、という人がほとんどでした。
金子氏を逮捕して、Winny の改良が止まったタイミングで、DSは暖めていたプラットフォームを次々に市場に投入してきました。
2005年12月15日、youtube がサービス開始。
2006年7月には、ツイッターが公開されます。
おなじく2006年9月26日、フェイスブックが一般公開。
しかし、この時点で、これらのDSプラットフォーム型SNSは、特に日本国内では、軒並み伸び悩んでいました。
この時点ではまだWinny が広く使われていたからです。
どんなに著作憲法違反で逮捕者が出ても、開発者が逮捕されても、マスコミでネガティブキャンペーンを張っても、
無料で見たい動画を自由にダウンロードできる魅力は抗いがたく、お金を払って、DSプラットフォームを使うことに対する抵抗感が、根強く残っていたのです。
DSは、考えました。この状況を打破するためには、一般の人たちが、Winny の使用をしり込みするような衝撃的な事件を起こすしかないだろうと。
そして、運命の日がやってきました。
2006年10月26日、Winny を一撃で葬り去る大事件が発生します。
それが「けつ毛バーガー事件」です。
村〇万〇子さんの悲劇
DSは金子さんを拘束している間に、Winny の評判を落とすため、様々なコンピューターウイルスをばらまき、Winny の誤作動を誘発していました。
その中の一つに、Winny をインストールしているPC内のファイルを、すべてネットにアップしてしまうというウイルスがありました。
Winny は本来、使用者が選択したファイルのみをネット上にアップする機能を備えているのですが、このウイルスに感染すると、使用者が選択していない、アップしたくないファイルまですべてアップされてしまうというものです。
この日、このウイルスの被害を受けたのは、三洋電機社員、白〇素〇氏でした。
白〇氏のPCに感染したウイルスは、PC内にあった三洋電機の社員名簿や、顧客リストをネット上に流出させてしまいます。
また、白〇氏は交際している女性がいました。徳島県警少年補導課の婦警である、村〇万〇子さんです。
白〇氏は村〇さんとの性行為の時に、村〇さんの裸体の画像や、性交中の動画を撮影し、それを自分のPCに保存していました。
その700枚以上の無修正の裸体画像や性交動画が、ウイルスによって、すべて、ネットにアップされてしまいました。
村〇さんは、一夜にして、自分の裸体の画像や、性交時の動画を、全世界に配信されてしまったのです。
ちなみにこの時流出した、村〇さんの裸体画像の一つに、後ろから臀部をとったものがありました。
この写真のお尻の間から毛がはみ出ており、それがハンバーガーのように見えたので、この事件は「けつ毛バーガー事件」と呼ばれています。
ネット上はお祭り状態となり、村〇さんの画像は何回となく再配信され、ネット利用者による二人の身元の特定作業が始まりました。
白〇さんと村〇さんは、mixi と呼ばれるSNSに実名登録しており、そこに経歴をすべて記入していたので、あっという間に二人の名前や経歴が割り出され、ネット中を駆け巡ります。
二人は勤務先や自宅住所まで特定され、自宅に人が押し掛ける事態になってしまいました。
これによって二人の関係は破綻し、ともに職場をやめることとなりました。
この事件の与えた衝撃はすさまじく、自分も同じ事態になることを恐れたWinny 使用者たちが、一斉にWinny をアンインストールしていきました。
隆盛を誇っていたWinny の使用者は、翌2007年初頭には、ほぼ0になってしまったのです。
DSプラットフォームの勝利
一方、Winny 開発者の金子勇氏の公判は進行し、2006年12月13日、京都地裁において、150万円の罰金刑の判決が下されました。
これを不服として、金子氏、検察ともに控訴し、控訴審では逆転無罪の判決となり、検察上告の末、2011年12月20日、最高裁は上告を棄却し、無罪判決が確定しました。
金子勇氏は晴れて無罪放免となったわけですが、この間、金子氏の弁護団による保釈の請求はすべて却下され続けました。
そもそも罪状自体が無理のある逮捕であり、最終的に無罪となっているわけで、この程度の事件で保釈が認められないのは極めて異例のことです。
その理由は、例のウイルスについての金子氏自身の次の言葉に集約されています。
「俺を釈放すれば、3日でワクチン作ってやるよ」
ということです。もし金子氏が保釈されていれば、あっという間にワクチンを作成し、ウイルスは効果を失っていたでしょう。
そうなれば、けつ毛バーガー事件は起きていなかった可能性が高いと思われます。
DSとしてみれば、金子氏を保釈してワクチンを作られてしまったら、計画がすべてぱあになってしまうので、裁判所に手をまわして、保釈を一切認めなかったと考えられます。
結局金子氏は無罪放免となったわけですが、すべては後の祭り、Winny はネットの世界から完全に葬り去られ、個人ネットワーク構築の可能性は消滅してしまいました。
ライバルのいなくなったDSプラットフォーム勢は着実に勢力を伸ばし、youtube 、ツイッター、FACEBOOKは、ネット上のシェアを独占していきます。
ほかに選択肢のなくなったネットユーザーはこれを受け入れ、ネット上のプラットフォームに動画や画像をアップするようになります。
DSは、個人の動画や画像を自分たちのサーバーで管理するようになり、すべての情報を把握し、気に入らない動画をすべて削除し、広告料の30%をピンハネする世界が、実現してしまったというわけです。